福岡地方裁判所 昭和61年(わ)347号 判決 1987年1月23日
本店の所在地
福岡市博多区博多駅南四丁目一二番三〇号
株式会社日電
(右代表者代表取締役 末吉嗣徳)
本籍
福岡県豊前市大字鳥井畑六三一番地の二
住居
福岡市南区若久二丁目一六番九号
会社役員
末吉嗣徳
昭和一五年三月一日生
右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官吉田幸久出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社日電を罰金三〇〇〇万円に、被告人末吉嗣徳を懲役一年二月に処する。
被告人末吉嗣徳に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告会社株式会社日電は、福岡市博多区博多駅南四丁目一二番三〇号に本店を置き、トイレ用電動換気扇等の訪問販売の目的とする資本金一、〇〇〇万円の株式会社であり、被告人末吉は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人末吉は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上及び雑収入の一部を除外するなどして簿外預金を蓄積する等の方法により所得を秘匿したうえ、
第一 昭和五七年八月二八日から昭和五八年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億七、四四八万八、八〇二円であったにもかかわらず、昭和五八年一〇月一日、福岡市東区馬出一丁目八番一号所在の博多税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が九九三万八、〇〇六円で、これに対する法人税額が三一八万五、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告会社の前記事業年度における正規の法人税額七、二二九万六、一〇〇円と前記申告税額との差額六、九九一万一、〇〇〇円を免れ、
第二 昭和五八年八月一日から昭和五九年七月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九、四四二万九、八〇六円であったにもかかわらず、昭和五九年一〇月二日、前記博多税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三、九〇九万四、九五二円で、これに対する法人税額が一、五八六万三、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により被告会社の前記事業年度における正規の法人税額三、九八二万三、八〇〇円と前記申告税額との差額二、三九六万円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全事実関係につき
一 被告人末吉の当公判廷における供述
一 被告人末吉の検察官に対する供述調書三通
一 被告人末吉作成の申述書二通(検三二、三五号)
一 被告人末吉の大蔵事務官に対する質問てん末書六通(検三七ないし四二号)
一 長嶺肇(三通)、本幡幸男(三通)、川口陽一の検察官に対する各供述調書
一 長嶺肇(三通)、本幡幸男(四通)、嬉野豊(二通)、橋本喜美子、松永輝雄の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 大蔵事務官作成の脱税計算書説明資料
一 大蔵事務官作成の査察官報告書二通
一 検察事務官作成の捜査報告書(検八号)
一 大蔵事務官作成の領置てん末書
一 登記官作成の登記簿謄本
判示第一の事実につき
一 被告人末吉作成の申述書二通(検三三、三四号)
一 被告人末吉作成の上申書
一 長嶺肇作成の申述書
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(検二号)
一 検察官作成の捜査報告書
一 押収してある法人税確定申告書一綴(昭和六一年押第三一七号の1)
判示第二の事実につき
一 大蔵事務官作成の脱税額計算書(検三号)
一 検察事務官作成の捜査報告書(検七号)
一 押収してある法人税確定申告書一綴(前同号の2)
(法令の適用)
法律に照らすと、判示各所為は各事業年度ごとに法人税法一五九条一項(被告人会社についてはさらに同法一六四条一項)に該当するところ、被告人会社については情状に鑑み同法一五九条二項を適用し、被告人末吉については所定刑中懲役刑を選択することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人会社については同法四八条二項により合算した金額の範囲内において罰金三〇〇〇万円に、被告人末吉については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内において懲役一年二月にそれぞれ処し、なお被告人末吉に対し同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 宮城京一)